ひよこ、すずりにむかいて

呼吸は残らないけど文字は残る

くだらないような話(ペットが死んで一年経った)

冬の間ホットカーペットを敷いていた。

ぶっちゃけその上に布団を重ねて寝ていたので、

おそらくばっちいなと思って、

彼氏に浴槽で足踏みして洗ってもらった。

 

ホットカーペット、

もともと実家の私の部屋から来ていて、

その上をよく猫が歩き回っていた。

 

実家を出たのは

家庭のトラブルが大きい。

 

母が私に執着して……と思っていたが、

母を孤立させていたのは父だなと思う。

(めんどくさくなるのでこの二行で済ます)

 

そんなこんなで、体の調子がおかしくなって

私が入院している間に

猫は天国へ旅立っていた。

 

「天国へ旅立つ」ってなんだよ、

死んだらそれっきりだよ、

と思っていたのだが、

今はどうしてか

「旅立って、天国で生活しているんだ」

としか思えない。

 

自分でも馬鹿だなとどこかで思うし、

恥ずかしくて人にはあまり言えない。

 

入院の終わる頃、父がひとりで病院に来た。

伝えなきゃいけないことがある、と言われて

猫の事だろうな、とすぐ分かった。

 

体弱ってたしな、

あそこから持ち直すのは難しいだろうな

とか、

情けない飼い主でごめんね、

という気持ちが大きくて、

ショックも受けてるのか受けてないのか分からなかった。

 

猫の体が弱ってから、

家族の誰と仲が良いか、

猫がどんな関わりを求めているのか、が

変わった気がしていた。

前よりも仲が良い時もあった気がした。

美化しているわけではなく。

 

その夜夢を見た。

 

猫が天国に移住するらしく、

結構雑なシャトルバスに乗せられて

引越しを手伝った。

 

派手な緑のアパートに住むらしい。

 

猫が手続きをしているあいだに

暇な私は観光してきた。

 

天国は観光地だから、

入り口だけ派手で、

中は普通の住宅地だった。

 

住所を教えてもらった。

天国二千の34という数字だった。

 

夢からさめて数日たって、

現実でつらい事や大変な事もあった

(楽しい事もあった)が

なんだかふわふわした気持ちで

退院した。

 

車で猫の墓参りに行く事になった。

 

そのお寺は、

おばあちゃんちの猫もお世話になったので

行った事があったし、

内装やシステムも知っていた。

 

恥ずかしながら、

住所の書いた手紙を置いてきた。

 

もともと隔たりがあるので

親に説明も出来ず、

20も過ぎて結構恥ずかしかったけど、

次いつお墓にいけるか分からないし

(私はすぐ実家を出る事になっていた)

後悔はないように、と変な度胸を持っていた。

 

三歳児のやることだな、

こういうところが発達障害の傾向ってついちゃうのかな、

ばかにされるかなー、

とか思いつつ。

 

そうそうそれで冒頭の、

なんでホットカーペットの話をしたかと言うと、

 

浴槽でジャブジャブ洗ったら、

地層のように古い汚れも浮き出てきたらしい。

 

次の朝布団で目を覚ますと

見慣れた、ところどころ色の違う毛を

一年ぶりに見かけて、

ぶわっと泣いてしまった。

 

「また現世で見かけることが出来た」

と思った

まだ一部こっちに居たんだね

触れるんだね

今も一ミリも変わらず大好きだよ

ダメな飼い主だったね

言って良いのか分からないけど、

一生愛してるよ

世界一かわいい猫だったよ

などなど……

 

この前合唱の集まりがあって、

「たいせつなものは ぜんぶここにある」

という歌詞に対して、

みんな、ここ がどこなのか

答えがばらばらだった。

 

なんていうか、

それでいいんだろうな

と思う。

 

死んだら終わりだと思ってがんばるのも意味があるし、

ずっと見守ってくれるからと悪い事できないのも、

死んだ人を大事にし続けるのも、

答えがないんだなぁ

と、22歳は思うのです……

 

余談ですが、

ペットが亡くなって半年後くらいに

ぶわーっと泣いてしまったとき、

一緒になって猫に対して大泣きしてくれた彼氏が

大好きでございます……。

 

ではではっ!